本科目では、仏教心理学の入門として、仏教と心理学、特にユング心理学と仏教について書かれたテキストを読み、理解を深めていきます。
仏教と心理学は、「こころ」について深く考える、理解するという点で共通しています。仏教というと、宗教的な側面を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、信仰や覚り(悟り)などの宗教的側面以外の思想的・哲学的・文学的な側面も多く研究されています。そして、仏教と一口に言っても、発祥の地のインドから北に伝わった大乗仏教と南に伝わった上座部仏教では大きな違いが見られ、大乗仏教の流れを汲む日本仏教にも多くの宗派があり、各々教義が異なっています。また、心理学の一分野である臨床心理学は哲学をルーツとする学問であり、仏教と親和性が高い学問です。心理学も、基礎心理学(認知心理学や発達心理学など)と、応用心理学(臨床心理学や産業心理学など)では、その対象や考え方、アプローチの仕方も異なります。
このように、仏教心理学は学際的な分野ですので、仏教と心理学について、それぞれ多くの基礎知識が必要となります。また、学問としての仏教心理“学”はまだ発展途上の段階で、欧米でも定義は確立していませんが、新しい学問領域の一つとして今も研究が進められています。
そこで、本科目では、その足掛かりとして、日本における分析心理学(ユング心理学)の第一人者でもあり、臨床心理士資格の創設者でもある河合隼雄氏の考える「ユング心理学と仏教」について理解を深めていただきたいと思います。
テキストには、専門用語が多く出てきますので、難解に感じる方もいると思いますが、通読することを目標に読み進めてください。大学生は「自分で学ぶ」「自分で調べる」ことが基本です。知らない用語については、心理学系、仏教系の辞書等で調べながら読むのも良いですし、興味を持った部分については、書籍で理解を深めてもよいでしょう。その際も、自分に合った書籍を一から探すことも一つの勉強です。本科目を履修し終わった際には、きっと多くの学びを得ることができることと思います。